緑内障手術
緑内障は、眼圧を下げることでその進行を防止したり、遅らせたりすることができる可能性がある病気です。ただし、ひとたび障害されてしまった視神経は回復することはありません。
早期に緑内障を発見できれば、あるいは神経の障害が軽いうちに適切な治療を受けることができれば失明に至る危険性を減らすことが期待できます。緑内障治療の目的は進行を止める、また遅らせることになります。今の視神経、視野を守るための治療を早期から実施することは重要です。
また緑内障のタイプが異なるため、それぞれの人に適した治療方針を決定していくことがとても重要になります。
緑内障手術にもいろいろな手術があります。一般的には眼圧が下がりやすい手術ほど合併症も多くなる傾向があります。病気によっても適応となる手術が異なります。
合併症を恐れ手術をためらうお気持ちはよくわかります。ただし、緑内障の手術は眼圧を下げる目的であり神経を治すわけではありません。視野が悪くなりきってから手術をしても元に戻るわけではないのです。
このため、どのタイミングでどの手術を行うのか医師と相談をし、計画的に治療を行う必要があります。
1:SLT(選択的レーザー線維柱帯形成術)
眼圧に関わる房水の出口である隅角の線維柱帯というところに特殊なレーザーを照射して排出を促す治療です。治療後眼帯などは不要です。入浴も可能です。
2:iStent inject W(水晶体再建術併用眼内ドレーン手術)
水晶体再建術併用眼内ドレーン手術は低侵襲緑内障手術の中でも極低侵襲な手術になります。この手術で使用する眼内ドレーン(ステント)は 長さ0.36mm の医療用チタン製で、体内に留置する非常に小さな医療機器です。
白内障手術と同時に行います。白内障手術では小さな切り口を作りま すが、その同じ切り口からステントを眼の中の組織に挿入することで眼圧を調整する房水の排出を改善し、眼圧を下げることが期待できます。
3:流出路再建術 眼内法
線維柱帯を特殊な器具で切開する手術です。眼内法は白内障手術と同じ創口から同時に行うことが可能です。
4:流出路再建術 眼外法
(360° suture trabeculotomy)
隅角の線維柱帯(房水の出口)を切開し流出を促します。眼外より強膜弁を作成しより広い範囲を切開します。
5:線維柱帯切除術(濾過手術)
結膜下へ房水を導くバイパスを作ります。結膜には濾過胞が形成されます。眼圧は下がりやすい手術ではありますが、術後は濾過量により様々な状況が起こりうるためこまめに通院を要します。また、必要となれば直ちに追加処置を行います。
※適応となる患者様には目の状態、全身の状態、術後管理の日程など一定の制限がございます。
6:エクスプレス(緑内障治療用インプラント挿入術 プレートのないもの)
線維柱帯切除術とほぼ同じですが、異なる点は孔を開けずエクスプレスを隅角に直接刺入する点です。これにより手術中に眼球が虚脱しにくい、流れすぎになりにくいといった利点があります。
※適応となる患者様には目の状態、全身の状態、術後管理の日程など一定の制限がございます。
*当院は入院施設ではございません。
片目が失明に近い、両眼の視野が著しく狭い方、全身疾患や通院の問題などで術後の処置が必要となる濾過手術などにおいては入院施設での治療をお願いする場合がございます。
緑内障手術の限界
緑内障手術は眼科医からも好かれていません。それは何故でしょう!? 緑内障手術は眼圧を下げることが目的であり視力や視野を良くする訳ではないからです。手術としては眼圧を下げやすい手術ほど術中、術後に起こりうる合併症や必要となる処置も増えるため、患者様と手術をする医師が共に粘り強く治療に立ち向かう決意が必要となります。また、患者様がこれらの手術内容や治療目的を十分に理解されていないと思わぬトラブルになり兼ねません。眼科医から「術後に見え方が良くなった実感が湧きやすい手術」が好まれるのは当然かもしれません。ただし、現在の緑内障治療の中心は眼圧下降であり薬剤のみでは限界もあります。複数の緑内障点眼を長い間使用し続けた影響で、角膜や結膜、眼瞼皮膚の障害が慢性的に出ている方も少なくありません。
一般的には、一つの病気に対し手術は一回のみで終わるというイメージがあるかもしれませんが、緑内障に関してはそれは当てはまりません。緑内障の手術はあくまでも点眼の延長線上にある治療選択の一つであり、手術をしてもしなくても通院や治療は継続が必要です。皆様が元気に活動できる期間になるべく良好な視野を保つため、できる限り少ない点眼で、なるべく低い眼圧を維持するための一つの選択肢にすぎません。また、緑内障の種類や病期によっても推奨されるタイミングも異なるため、いつでもどの手術が適応となるわけではありません。
最近はMIGSといわれる低侵襲緑内障手術が登場し、早期のうちから治療を行うことが可能となりました。患者様の眼に負担の少ない緑内障手術になりますので、早期に発見した際は積極的に治療して現在の視神経、視野を守ることが期待できます。